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    <title>週刊GAUCHE</title>
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    <subtitle>乱筆家ＧＡＵＣＨＥの魂の発露的作品集</subtitle>
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    <title>第六話「疑念」</title>
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    <published>2005-04-04T08:24:54Z</published>
    <updated>2008-12-05T08:26:06Z</updated>

    <summary>明け方、エージェント・ベンの部屋の前。一人の男が中の様子を伺っていた。「ドアが撃...</summary>
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 269px; HEIGHT: 173px" height="349" alt="1112544816.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1112544816.jpg" width="520" /></span>明け方、エージェント・ベンの部屋の前。<br />一人の男が中の様子を伺っていた。<br />「ドアが撃ち抜かれてる...。ここにもヤツの手が廻ってきたのか？」<br />イエローベアだった。<br />「まだ硝煙の匂いが残ってるな。」<br />用心しながらゆっくりと部屋の中に入る。<br />一つずつ部屋を見て回るがもぬけの空だった。<br />特に争ったような形跡も無い。<br />襲撃は受けたが無事、という事だろうか？<br />あるいはブラボーのように拉致された疑いもある。<br />考えててもしょうがないのでベンに連絡を取ってみる。<br />呼び出し音が鳴るが出る気配は無い。<br />あきらめて、転がっていた椅子を起こし座る。<br />少し頭を整理してみようと努める。<br />「なぜだ？なぜこうも俺の行く先々にヤツは現れる？」<br />真っ先に考え付くのは裏切り者の存在だった。<br />だが今日ここに来たのは誰にも告げてない行動だ。<br />「では俺の行動を封じる為に仲間を始末して回ってる？」<br />確かにベンとはよくチームを組んでいたがそれだけでわざわざ先回りして襲うとは考えにくい。<br />しかも都合よく到着する直前に襲うなんて出来過ぎている。<br />どうにも理解しがたい事実ばかりが積み重なっていく。<br />バサッ！<br />突然の物音に銃を抜き身構えてしまう。<br />音のした方をよく見ると壁に掛けてあったカレンダーが落ちていた。<br />「何をビクついてんだ俺は。」<br />自嘲気味につぶやきながらそれを拾いあげ眺める。<br />花の写真が使われたカレンダーだった。<br />「らしくないな。ヤツの女の趣味か？」<br />何気なくめくっていくとマーガレットの写真で手が止まる。<br />いつもは花など女子供の趣味だと目もくれないのだが、何故だか気になった。<br />「何だ？何か大切な事を忘れている気がする...。」<br />写真を凝視しながら固まってしまう。<br />「思い出せ、思い出せ。俺はなぜこの花が気になる？」<br />必死に記憶の糸を手繰り寄せようとする。<br />少しずつ、だが確実に何かが無意識の海から浮かび上がってくるのを感じた。<br />次の瞬間、突如として眼前に爆発する車の映像が浮かんだ。<br />凄まじい爆音と激しい熱風。<br />四散する車の破片。<br />一瞬の間をおいて空から舞い降りてきたのは燃え上がるマーガレットの花、花、花。<br />「ユキーーーーーーーーッ！！」<br /><br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>第六話「交響曲第5番」</title>
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    <published>2005-04-04T14:21:40Z</published>
    <updated>2008-12-04T14:22:54Z</updated>

    <summary>元々予定されていた船外活動を終え、例の物体のサンプルを採取しISSに戻った頃には...</summary>
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        <category term="宇宙の海は俺の海" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 214px; HEIGHT: 250px" height="405" alt="1112544859.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1112544859.jpg" width="377" /></span>元々予定されていた船外活動を終え、例の物体のサンプルを採取しISSに戻った頃にはさすがに二人の顔に疲労の色が滲み出ていた。<br />ドーソンはミッションタイムから解放されると、少し音楽を聴いてからそのまま眠ってしまった。<br />特にすることも無かったイワノフは報告書をまとめたりしていたが、それも終わると不意に米国実験棟「デスティニー」に足を向けた。<br />デスティニーではベンジャミンがさっき採取してきた物体の調査に取り掛かっていた。<br />室内にはベートーベンの「運命」が大音量でかかっている。<br />いつだったかベンジャミンが言っていた。<br />『研究中はいつもこれをエンドレスで聴いてる。しょうもない洒落みたいだが俺はこの曲を聴いてるとインスピレーションが湧いて来るのさ。科学も芸術も目指す先は同じだからな。』<br />ベンジャミンはイワノフが入ってきたのにも全く気づいていない。<br />「どうだ、何か分かったか？」<br />「うわ、脅かすなよ。」<br />ベンジャミンがようやくイワノフの方を見る。<br />「何か分かったかも何も、今調べ始めたばかりだぜ。」<br />「それもそうだな、スマン。」<br />「だけどなイワノフ、これはあくまで俺の勝手な推測だが世紀の大発見の可能性が高いぞ。」<br />「ホントか？」<br />「ああ。ま、結果が出たら知らせるからしばらく独りにしといてくれ。こいつらと格闘しなきゃしなきゃならんからな。」<br />「了解。俺たち三人の名が宇宙史に刻み込まれる事を祈っとく。」<br />「おう、是非そうしてくれ。」<br />既にベンジャミンの目はイワノフを見ていない。<br />実験器具を取り出したり、コンピューターに何か打ち込んだりしている。<br />イワノフは苦笑いしながらデスティニーを後にした。<br />窓から地球を眺める。<br />「青いな。」<br />つぶやきながらまたガガーリン少佐に思いを馳せる。<br />「少佐、もうすぐ貴方と肩を並べる事ができるかもしれません。もっとも私の場合は幸運なだけですが。」<br />そう言いながらも偉大なる先人に追いつけるかもしれないと思うと少し頬が緩む。<br />ドーソンとのいざこざもどうでもいい瑣末なことに思えてきた。<br />「神よ、今日という日を感謝します。」<br /><br />数時間後、デスティニーでは異変が起きていた。<br />電子顕微鏡をから送られてくる映像を観るベンジャミンの手が小刻みに動く。<br />いや正確には震えていた。<br />「な、なんだ、コレは！」<br />顔面蒼白になりながら怒鳴るベンジャミン。<br />幻覚を追い払うかのように二、三度大きく頭を振ってもう一度モニターを凝視する。<br />だが先刻観たのと変わらぬ映像がやはりある。<br />何度観ても同じだ。<br />「これは宇宙史どころじゃないぞ。全世界をひっくり返す勢いの大発見だ！」<br />今度は顔を紅潮させながら叫ぶ。<br />「こうしちゃいられん！」<br />確認した事実を揺るぎないものにする為にもういくつか実験をするのだろうか、慌てふためきながら準備にとりかかるベンジャミン。<br />電子顕微鏡にかけている試料を交換しようと手を伸ばした時に異変が襲った。<br />「う・うああーーーーーーーーっ！」<br />絶叫するベンジャミン。<br />だが皮肉にも『運命』のイントロが響き渡り、その声は二人に届く事は無かった。<br /><br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>第七話「サリー、その愛（１）」</title>
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    <published>2005-04-11T10:26:53Z</published>
    <updated>2008-12-05T10:28:23Z</updated>

    <summary>久しぶりにサリーと喧嘩をした。理由は何だったかな。とにかく下らないことが発端だっ...</summary>
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 234px; HEIGHT: 318px" height="800" alt="1113153884.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1113153884.jpg" width="600" /></span>久しぶりにサリーと喧嘩をした。<br />理由は何だったかな。<br />とにかく下らないことが発端だったのだけは確かだ。<br />「いい加減にしろよ！さっきからしつこいぞ！」<br />「自分こそその頑固なところ治したらどうなのよ！」<br />そんな風に言い争っていると連絡が入った。<br />いつもながらまずいタイミングでベルが鳴る。<br />「ああ、ブラボーだが。どうした？うん、うん。何っ・・・？」<br />思わず声を荒げてしまう。<br />サリーがじろりとこちらを睨む。<br />どうやらイエローベアがヤバイ事になっているらしい。<br />電話を切ると急いで自分の部屋に戻った。<br />すぐに出かけねばならない。<br />額縁の裏の金庫からコルトを取り出す。<br />マガジンを抜き取り弾が装填されている事を確かめる。<br />その重さで少し気が引き締まるのを感じながらホルスターに納める。<br />一瞬の間をおいて振り向きざまに黒光りするソレを抜く。<br />0.29秒。<br />どこかのヒゲのガンマンには辛うじて勝てそうだ。<br />支度を終え玄関でコートに袖を通しながら声を掛けた。<br />「行ってくる。しばらく戻れないかもしれん。」<br />「どーぞご自由に！一人のほうがせいせいするわよ！」<br />こっちを振り向きもせずにサリーが応える。<br />やれやれ、どうやら相当ご立腹らしい。<br />肩をすくめながらドアを閉める。<br />外に出ると日没にはまだ間があるようだった。<br />もう春だと言うのにうっすらと寒い。<br />駐車場までは少し歩かねばならない。<br />「いつ誰に狙われるかも知れない立場の人間が住む所じゃないな。」<br />一人で文句を言うが、サリーがどうしてもここが良いと言って聞かなかったのだ。<br />この事をベンに話すと女に甘いのが元で命を落とすかもしれんと言われた。<br />そうかも知れない。<br />ま、そうなったらそうなった時の事だ。<br />そんなことを思いながら駐車場に向かう足を速める。<br />駐車場の手前に花屋がある。<br />店先をのぞきながら通り過ぎようとすると、覚えのある香りについ足を止めてしまう。<br />マーガレットだ。<br />花言葉は「心に秘めた愛」。<br />サリーが教えてくれた。<br />「花言葉は『恋占い』って書いてる本もあるけどあたしは好きじゃないの。だって花びらを千切られるなんて可哀想じゃない。」<br />俺がこの花をプレゼントしたときそう言って笑っていた。<br />「仕事が片付いたら買って帰ってやるか。」<br />俺は車に乗り込みイエローベアの隠れ家へと向かった。<br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>Ｋ（前編）</title>
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    <published>2005-04-16T03:49:09Z</published>
    <updated>2008-12-04T03:50:34Z</updated>

    <summary>少しだけ昔の話。あるところに猫がいた。その猫は闇夜のように黒かった。その上ひどく...</summary>
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 269px; HEIGHT: 189px" height="290" alt="1113580147.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1113580147.jpg" width="405" /></span>少しだけ昔の話。<br />あるところに猫がいた。<br />その猫は闇夜のように黒かった。<br />その上ひどく醜い顔をしていたので、街ではひどく忌み嫌われていた。<br />「オイ、見ろよあの猫。気持ち悪いな。」<br />「うわ、ホントだ。オエッ。」<br />こんな嘲笑はいつもの事だった。<br />またある時には石を投げつけられたりもした。<br />「アレに当てたら10点。血が出たら50点。死んだら100点な！」<br />「おりゃ！あー、惜しい。」<br />「どこ狙ってんだ。それっ。クソッ逃げるなよ！」<br />猫のほうでもいつしかそんな扱いを当たり前に思い、さっさと人目につかないところに消えてしまう。<br />孤独にはなれっこだった。<br />生まれて世界を意識しだした時には既に親はいなかった。<br />死んでしまったのか、あるいはあまりの醜さに捨て去られたか。<br />今ではむしろ独りでいることを望んでいる。<br />たまに変わり者が拾って帰ろうとしたが、ひどく引っ掻いてやると二度と寄ってはこなくなった。<br />中には見かけるたびに危害を加えようとする者もいる。<br />そんな毎日を送ってきた彼にとって誰かの為に何かをするだとか、他者を思いやる事なんかわずらわしい以外の何物でもなかった。<br /><br />ある冬の日の事、路地裏でウトウトしていると誰かが彼を拾い上げた。<br />（マタカ。）<br />猫はそいつを見上げた。<br />若い男だ。<br />髪はボサボサで色白のひょろりとしたやつ。<br />「こんばんは素敵なおチビさん。なんだか僕らよく似てるなあ。」<br />（ドコガダ、コノモヤシ。）<br />すぐさま腕を引っ掻いて逃げ出す。<br />「いってー！」<br />振り返って見ると男は腕を押さえてしゃがみこんでいる。<br />（フン、ザマミロ。）<br />そのまま踵を返すと猫は闇夜に溶け込んでいった。<br /><br />あくる日、日向ぼっこをしながらウトウトしていると、また誰かに拾われた。<br />目を開けるとそこには昨日のモヤシがいた。<br />（ナンダコイツ。）<br />「やあ、また会えたね。」<br />腕の中で軽くもがく。<br />「大丈夫、大丈夫だよ。」<br />（ナニガダイジョウブダ。）<br />また腕を引っ掻いて、まんまと地面に降り立つ。<br />「フーッ！」<br />軽く威嚇してから後ろも見ずにそこを走り去った。<br />（ナンナンダヨアイツ。バカジャナイノカ。）<br />まだ体に男の腕の温もりがかすかに残っている。<br />（デモ...サスガニモウコナイダロ...。）<br /><br />またあくる日、ゴミ箱をあさっているとモヤシが現れた。<br />猫は訳が分からなかった。<br />今までの人間ならとっくに寄ってこないはずだった。<br />背中の毛を逆立て身構える。<br />「そう怖がるなよ。」<br />（コワガル？コノオレサマガ？）<br />「ただ君と友達になりたいだけさ。」<br />（トモダチ？オマエヤッパリバカダロ。）<br />猫が少し気をそがれたのを見て、男はすぐさま抱きかかえた。<br />（ヤメロ！ハナセ！）<br />「大丈夫、大丈夫。」<br />（ウルサイ！ハナセ！）<br />もがいて、必死に引っ掻いたが今日のモヤシは離さなかった。<br />「大丈夫だよ。寂しかったんだろ。」<br />（ハナセ！ハナセ！）<br />どれだけ暴れようがモヤシはしっかりと抱きかかえたままだった。<br />やがて猫はあきらめたのか逃れようとする事をやめた。<br />「さあ、ウチへ行こう。温かいスープも毛布もあるよ。」<br />（ドウセサイショダケダ。スグニオイダスニキマッテル。）<br />（ソウサ、ソウニキマッテル...。）<br />男の腕の中で温まりながら、そのうち猫は眠ってしまった。<br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>第七話「VANISHING」</title>
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    <published>2005-04-17T14:23:19Z</published>
    <updated>2008-12-04T14:24:41Z</updated>

    <summary>付着物を発見した翌朝、イワノフは奇妙な感覚で目を覚ました。別に周りの状況にこれと...</summary>
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 304px; HEIGHT: 207px" height="423" alt="1113663894.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1113663894.jpg" width="639" /></span>付着物を発見した翌朝、イワノフは奇妙な感覚で目を覚ました。<br />別に周りの状況にこれといった変化は無かった。<br />機器は正常に作動していたし、ISS内部も至って静かなものだった。<br />逆に静かすぎたかもしれない。<br />「昨日色々あったからまだ疲れが残ってるんだろう。」<br />そう自分に言い聞かせ、ゆっくり起き上がって目覚めのコーヒーをくわえた。<br />「宇宙でコーヒーが飲めるなんて贅沢なもんだ。これで香りが楽しめればなあ。」<br />誰に言うともなくつぶやく。<br />チューブで飲むコーヒーは少し苦味を強くしてある。<br />目覚めにはコレがちょうどいい。<br />ゆっくり地球を眺めようと視線を移した時、危うくコーヒーを吹き出しそうになった。<br />「・・・・・！」<br />何が起こっているのか理解するまでにしばらくの時を必要とした。<br />「バカな！なぜこんな事に・・・。」<br />窓の外には確かに地球が浮かんでいた。<br />ただしそれはいつも通りの風景では無かった。<br />見える地形が変わっていた。<br />つまり、周回軌道が大きく変わっていた。<br />イワノフはすぐにドーソンを起こしに走った。<br />ドーソンは最初何を言われているのか分からないようだったが、イワノフに窓まで引っ張って行かれて一気に目を覚ました。<br />「オイ！なんだこりゃ？どうなってんだ？」<br />ドーソンがいきりたつ。<br />「俺に言われたって知るもんか！」<br />「ベンはどこだ？」<br />「まだ見てないが、昨日俺が休む前はデスティニーで例のサンプルを調べてた。」<br />「行くぞ！」<br />二人はデスティニーに急いだ。<br />しかしそこにベンジャミンの姿は無く、使われた実験器具だけが雑然と置かれているだけだった。<br />「・・・ズヴェズダに行こう。」<br />「・・・・・ああ。」<br />脳裏に嫌な感触が拡がっていくのを二人は感じた。<br /><br />ズヴェズダに着いた二人は呆然とするしかなかった。<br />床の上にはベンジャミンの着ていた服が落ちていた。<br />服だけではなく靴もそこに転がっていた。<br />まるで今しがたまでそこに居た人間が服だけを残して溶けてしまったかのように見えた。<br />明らかに通常では考えられない何かが起こっていた。<br />「オイ、なんだよこれ。なんなんだよ一体！」<br />「落ち着けドーソン！まず地上に連絡を取るんだ。」<br />そう言いながらもイワノフは声が震えるのを抑えることができなかった。<br />「ヒューストン！こちらISS！聞こえるかヒューストン！こちらISSのドーソンだ！」<br />マイクを握り、ジョンソン宇宙センターに向けてまくしたてるがまるで反応が無い。<br />「オイ、誰もいないのか？ヒューストン！こちらISS！こちらISS！」<br />やはり何の返事も無い。<br />だがNASAの施設に誰もいないなんてありえない事だ。<br />「代わろう。今度はこっちの基地と連絡を取ってみる。」<br />ドーソンからマイクを受け取ると、自分を落ち着かせる為かゆっくり問いかける。<br />「こちらISSのイワノフ。バイコヌール宇宙基地、応答願う。こちらISSのイワノフ。バイコヌール宇宙基地、応答願う。」<br />予想通り何の反応も無い。<br />地上の声が聞こえてくるはずのスピーカーからはノイズだけが虚しく流れてくるだけだった。<br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>第八話「サリー、その愛（２）」</title>
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    <published>2005-04-20T10:29:01Z</published>
    <updated>2008-12-05T10:30:15Z</updated>

    <summary>あの人が出て行ってからどれくらいの時間が経ったのだろう。茜色の空が随分暗くなって...</summary>
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 256px; HEIGHT: 174px" height="560" alt="1113926288.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1113926288.jpg" width="800" /></span>あの人が出て行ってからどれくらいの時間が経ったのだろう。<br />茜色の空が随分暗くなっていた。<br />ベランダに出てタバコに火を点けた。<br />ゆっくりと肺まで煙を到達させる。<br />そしてまたゆっくりと吐き出しながらつぶやく。<br />「コレももうやめなきゃ...。」<br />もともとあの人からはいつもやめるように言われていた。<br />やれ女はタバコを吸うもんじゃないだの、子供ができたらどうするんだだの。<br />そのくせ自分はプカプカ吸っちゃっていい気なもんよ。<br />おあいにくさま、もうやめるわよ。<br />やめなきゃいけない理由が出来たんだから...。<br />あの人はどんな顔をするだろう？<br />わからない。<br />でもきっと喜んでくれると思う。<br />「こうしちゃいられないわ、栄養つけなきゃ！」<br />勢いよく立ち上がるとコートを羽織って街へ出た。<br /><br />食材を買い込んだ帰りに花屋の前を通ると馴染みの店員が声を掛けてきた。<br />「ヘイ、サリー！買い物かい？ウチにも寄ってけよ。サリー美人だからサービスしとくぜ！よっ美人・男泣かせ・憎いねこのお！」<br />慣れるまでは恥ずかしかったが、どうもこの人はこういう人らしいと理解してからはこの台詞も平気になった。<br />「あらマーガレット入ったのね。じゃあもらっていこうかしら。全部。」<br />「はい毎度～、全部ね。...ってぜんぶぅ!?」<br />「あらイケナイ？」<br />「いや、そりゃありがたいけど...。はは～んなんか良いことあったな？」<br />「わかる？」<br />「わかる？ってそりゃこんな買い方されたら何かあるなと思うだろ普通。」<br />「ふふふ、探偵さんになれるわよ。それじゃ後で届けてね。」<br /><br />家に戻るとすぐに夕食の支度にかかった。<br />いつもの癖で二人分の食事を作ってると気づいたのはもう出来上がる直前だった。<br />それをムキになって全部平らげる。<br />さすがにしばらく動く気にもならなかった。<br />我ながら少し呆れる。<br />「どっちにしろ二人分食べなきゃいけないし、オッケーオッケー！」<br />必要以上に大きな声で独り言を言うが、壁に吸い込まれるだけだった。<br />テレビでも見ようと思いつけてみたりもするがつまらない番組しかやってない。<br />あの人のいない家はガランとして、やはり寂しくなってくる。<br />「ふう。」<br />知らず知らずため息がこぼれる。<br />いつ帰ってくるか分からないあの人を独りで待つ生活には少し疲れていた。<br />衝動的にどこか遠いところに行ってしまいたくなるときもあった。<br />でもこれからは違う。<br />「マーガレット買うの早すぎたかなあ...。」<br />いつの間にかにやけ顔でつぶやいていた。<br />「まいっか、全部枯れちゃうまでにはなんだかんだで帰ってくるでしょ。」<br />その時玄関のチャイムが鳴った。<br />「はーい。花屋さんねー、今行くわー。」<br />あのドアを開けたら新しい生き方が私を待っている。<br />きっと素晴らしい明日が。<br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>Ｋ（中篇）</title>
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    <published>2005-04-25T03:51:03Z</published>
    <updated>2008-12-04T03:52:22Z</updated>

    <summary><![CDATA[&nbsp; 猫はそれから男の家に住むようになった。男は猫に名前をつけた。「おチ...]]></summary>
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline">&nbsp;</span>
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 217px; HEIGHT: 277px" height="404" alt="1114357741.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1114357741.jpg" width="300" /></span>猫はそれから男の家に住むようになった。<br />男は猫に名前をつけた。<br />「おチビさん、今日から君の名前は"ホーリーナイト"だよ。」<br />（フン、オカシナナマエニシヤガッテ。）<br />「君と初めて会ったのは12月24日だった。そして君は闇夜みたいに真っ黒だろ。だから聖なる夜。"Holy Night"さ。」<br />（セッカクダカラ、ソレデガマンシテヤルヨ。）<br /><br />一人と一匹の共同生活が始まった。<br />「おい、ホーリー・ナイト。あんまり動くなよ。」<br />（ケッ、オマエガカッテニカイテルダケダロ。）<br />男の職業は絵描きだった。<br />（アー、メンドクセエ。）<br />ブツブツ言いながらも男の目の前から消えようとしない。<br />「よし、やっと一枚デッサンできたぞ。ほら、見てみろよ。」<br />男のそばに行ってスケッチブックを覗き込む。<br />（フン、マアマアダナ。）<br />「ハハッ、なんだよ、そんなにくっついて。甘えてるのか？」<br />（・・・ウルサイ、バカ！）<br />自分の行動に驚いて外に飛び出していく。<br />「おっ、出かけるのか？車には気をつけろ。」<br />そんな日々が繰り返されていくうちに、男のスケッチブックはほとんど黒一色で埋め尽くされていった。<br /><br />「ただいまー。」<br />（オソカッタナ。）<br />「やあ、出迎えありがとう。待ってろよ、今ご飯にしてやるからな。」<br />帰ってくるなり猫に食事を準備してやる。<br />「ほら、おあがり。」<br />「ニャー。」<br />男の顔を見て座ったまま動こうとしない。<br />「ん、どうしたんだ？食べないのかい？」<br />「ニャー。」<br />猫はまだ食べずに座っている。<br />「ひょっとして僕のご飯ができるまで待っててくれてるのか？」<br />「ニャー！」<br />「よし、じゃあ少しだけ待ってくれよな。優しいなホーリーナイト。」<br />（イイカラ、ハヤクシロ。）<br />猫と男は一緒に晩御飯を食べるのが当たり前になっていった。<br /><br />「ただいまー。」<br />（キョウモ、オソカッタナ。）<br />「さあ、晩御飯にしようか。ご飯って言っても僕はコレだけどね。」<br />男の食事はパンの耳だけだった。<br />（オマエ、ダイジョウブカ？）<br />猫は男を見上げる。<br />「絵がなかなか売れないんだよね。みんなお前の美しさを分かってくれないんだ。」<br />猫が男の足に体を擦り付ける。<br />「大丈夫。これでも体は丈夫な方さ。」<br />（ホカノモノ、カケ。）<br />「きっと分かってくれる人はいるはずさ。平気平気。」<br /><br />猫と男が暮らし始めて一年がすぎた。<br />街はまた冬の景色へと変わっていたが、男のスケッチブックは相変わらず黒づくめだった。<br />「ただいまー。」<br />（キョウハ、ウレタカ？）<br />「ほら、ご飯だぞ。」<br />猫に食事を出すと自分は座ってしまう。<br />（オマエ、タベナイノカ？）<br />「僕はちょっと風邪気味でね。食欲が無いんだ。」<br />話しながら男の口からは咳が一緒に漏れる。<br />「大丈夫、大丈夫だよ。」<br />こんな風に食べない時もたまにあったので、猫も気にせず自分の分を食べると男にくっついて丸まった。<br />「お前が来てから二度目の冬だな。」<br />優しく頭を撫でてやる。<br />「ニャー。」<br />猫も気持ちよさそうに声を上げる。<br />「これからもずっとヨロシクな、ホーリーナイト。」<br />猫はその声を聴きながら眠ってしまった。<br /><br />ある日、目覚めた男は体の異変に気がついた。<br />尋常じゃない高熱が出ていた。<br />咳も止まらない。<br />とてもじゃないが起き上がる事なんかできなかった。<br />（オイ、ドウシタ？）<br />枕元にちょこんと猫が座っていた。<br />「大丈夫。少し疲れがたまっていたのかな、寝てれば治るさ。もっとも医者に掛かる金なんか無いんだけどね。」<br />そういいながら咳をする。<br />一回、二回、三回。<br />そして四回目に喀血した。<br />「ああ、これは少しまずいなあ...。」<br />そのまま男は意識を失ってしまった。<br />猛然と街へと飛び出す猫。<br />「うわっ、気色悪いな！何だこの猫！」<br />道行く人の足元にまとわりついて男の危機を知らせようとするが通じるはずも無い。<br />「あっち行け！シッシッ！」<br />しばらく粘ったが誰も彼も猫を追い払うだけだった。<br />途方にくれ、仕方なく部屋に戻ると男が布団から半身起こし、何かしていた。<br />（オイ、ナニシテル？）<br />「やあ、お帰り。待ってたよ。」<br />男は手紙を書いていた。<br />書き終えるとまた咳をした。<br />今度はおびただしい量の血が出た。<br />手で口を押さえているが、もはや何の意味も成さない。<br />咳がおさまると口をぬぐい、声を絞り出すように喋った。<br />「お願いがあるんだ。これを僕の故郷に届けてくれ。夢を追いかけて飛び出した僕の帰りを待ってる恋人にこれを。」<br />震える手で手紙を猫に差し出した。<br />高熱でもうまともな判断ができなくなっているのだろう。<br />だが猫は黙ってソレを口にくわえた。<br />「ありがとう、ホーリーナイト。」<br />それだけ言うと男はまた激しい咳と吐血に見舞われた。<br />猫はそばでじっと見守る事しかできなかった。<br />何度か発作を繰り返し、やがて男は息を引き取った。<br />猫はその枕元からしばらく動こうとしなかった。<br />やがて男のそばを離れたかと思うと、ゆっくり部屋を見回した。<br />（オマエ、ヤッパリバカダッタ。）<br />部屋の壁という壁に黒猫の絵が掛けられていた。<br />（オレノエナンカ、ウレルワケナイ。）<br />色んな構図で黒猫が描かれていた。<br />（オマエ、オオバカヤロウダ。）<br />どれもが温かい視点で捉えられていた。<br />黒猫はもう冷たくなった男のそばに行くと顔をペロペロとなめた。<br />「ニャー！」<br />外に出ると雪がちらついていた。<br />（テガミ、アズカッタゾ。）<br />猫は温かかった我が家を一度だけ振り返り、夜の闇に向けて勢いよく走り始めた。<br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>第八話「噂」</title>
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    <published>2005-04-27T14:25:08Z</published>
    <updated>2008-12-04T14:26:05Z</updated>

    <summary>いったん通信をあきらめた二人はシステムの調査をしてみることにした。メインコンピュ...</summary>
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        <name>GAUCHE</name>
        
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        <category term="宇宙の海は俺の海" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 222px; HEIGHT: 141px" height="195" alt="1114531909.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1114531909.jpg" width="307" /></span>いったん通信をあきらめた二人はシステムの調査をしてみることにした。<br />メインコンピューターは通常通り動いていた。<br />さっそく通信に関する部分を調べてみる。<br />イワノフがしばらくキーボードを叩いていたが、不意にその手が止まる。<br />「おい、何やってんだ？さっさとパスワード打ち込めよ。」<br />「変わってる。」<br />「はぁっ？」<br />「パスが変えられてる！昨日までのものじゃ受け付けない。」<br />「ベンの仕業か・・・。」<br />「それしか考えられないな。」<br />厳しい顔でモニターを見つめる二人。<br />「とりあえずヤツの誕生日とか試してみろよ。」<br />「もうやったさ。当然ダメだ。他にも思いつくまま試したが無駄だった。」<br />「じゃあ何も調べられないのか？」<br />「いや、そうでもない。システム全てを書き換える時間は無かったと見える。現にコンピューターは操作できるしな。恐らく重要な部分のみだろう。」<br />「オペレーションシステムはどうだ？」<br />「やってみる。」<br />またしばらくキーボードを叩く。<br />「ダメだな。生命維持とかその辺は問題ないが、姿勢制御とかの部分、要はISSを動かすようなところは全滅だ。」<br />「ダメか・・・。空飛ぶアルカトラズってとこだな。死にはしないが何もできない。」<br />ドーソンが天を仰ぎながら投げやりに言う。<br />「地上の連中もそろそろ異変に気づいてるだろうな。」<br />「ああ、定期通信も取れてないからな。挙句の果てに軌道まで変わってるんだ。気づかないはずが無い。」<br />「地上からハッキングしてシステムを復旧できないかな？」<br />「無理だろう。恐らく回線自体が閉じられてる。」<br />「打つ手なしか・・・。」<br />二人は何もできない事を思い知らされただけだった。<br />「アメリカがシャトルを飛ばすとして、最短でどれぐらいかかる？」<br />「さあな。前例が無いからな。過去の着陸から再飛行までの最短期間は３ヶ月弱だった。まあ、どんなに急いでも１ヶ月はかかるだろうな。」<br />「そうか。幸い水も空気も食糧もそれまではもつから信じて待つしかないか。」<br />「だな。とりあえず少しでも長く待てるように食糧をチェックしておくか？」<br />「ああ、そうしよう。」<br /><br />倉庫に着くとまたしても信じられない光景が二人を待っていた。<br />「・・・・・！」<br />そこに保管されていた全ての食糧に得体の知れない緑色の物体が付着していた。<br />それはヌラヌラとした光沢を持ち、例えるならナメクジが這い回った跡の様であった。<br />「これは・・・、まさか！」<br />イワノフが辛うじてそれだけつぶやく。<br />ドーソンが謎の物体に恐る恐る手を伸ばそうとする。<br />「触るな！」<br />イワノフが寸前で腕をつかみ制止する。<br />「何だよ？お前コレが何なのか知ってるのか？」<br />「知ってるわけじゃない。だが・・・。」<br />「だが？『だが』何だってんだよ？ハッキリ言えよ！」<br />「地上で訓練してた頃、ある噂を聞いた。」<br />イワノフはゆっくり語り始めた。<br />「ガガーリン少佐が人類で初めて宇宙を飛んだのは知ってるな？」<br />「バカにしてるのか？そんなの常識だろ。」<br />「だが生物では初めてじゃない。」<br />「ああ、二番目だな。先に猿で実験したんだろ。それも知ってる。」<br />ドーソンが少し苛立ちながら先を促す。<br />「いや、実は二番目ですらない。三番目だ。」<br />「なんだと？そんな話聴いた事無いぞ！」<br />「当たり前だ。最初の実験は失敗したんだからな。当時はアメリカと我が連邦で宇宙開発競争の真っ只中だ。公表できるはずも無い。この事実は闇から闇に葬られた。知ってるのは宇宙庁関係者だけだ。」<br />「で、それがこれとどう関わってくるんだ？」<br />「いいか、ここからはあくまでも噂だぞ。」<br />一呼吸おいてイワノフが続ける。<br />「猿を乗せた帰還ポッドは確かに帰ってきた。だが、まともじゃなかった。ポッド中に気味の悪い緑色の物体がこびりついていたんだ。回収に行った者も、その付近もそれに汚染された。事態を重く見た中央はそこにミサイルを撃ち込んだ。１キロ四方を吹き飛ばして一件落着さ。後はミサイル実験ということでかたづいた。」<br />「ホントかよ？」<br />「噂だと言ったろう。しかしコレを見ると・・・。」<br />「ああ、噂で片付けるわけにも行かないようだ。」<br />ゆっくり周りを見回す二人。<br />その時、緑色の物体に異変が生じた。<br />「うおっ、何だぁ？」<br />「これは・・・、生物なのか！」<br />それは徐々にではあるが確実に動いていた。<br />さながら原形生物の様な動きを見せながら部屋の真ん中に集まっていく。<br />二人はただ見入るしかできなかった。<br />やがてそれは一つの形を作り始めた。<br />それが何の形か気づくのに、さほど時間は掛からなかった。<br />「おい、そんな・・・。ありえねえ、ありえねえぞ！」<br />「神よ・・・。」<br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>第九話「迷走」</title>
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    <published>2005-05-04T10:30:43Z</published>
    <updated>2008-12-05T10:33:35Z</updated>

    <summary>外からけたたましい騒音が聞こえてくる。「ん・・・。」その音でエージェント・ベンは...</summary>
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        <name>GAUCHE</name>
        
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        <category term="雨とマーガレット" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 158px; HEIGHT: 272px" height="480" alt="1115140725.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1115140725.jpg" width="246" /></span>外からけたたましい騒音が聞こえてくる。<br />「ん・・・。」<br />その音でエージェント・ベンは目を覚ました。<br />「んだよ、朝っぱらから工事なんかしてんじゃねえよ・・・。」<br />ベッドで仰向けのまま騒音を呪う。<br />しばらくボーッとしていると、視界にある天井が見慣れぬものだとようやく気づいた。<br />慌てて体を起こし周りに目をやる。<br />床には空になったバーボンのボトルが転がっている。<br />「ここは・・・。」<br />少しずつ脳が機能し始める。<br />昨夜、謎の男の襲撃を受けた俺はすんでのところで逃げ出した。<br />ひたすら車を飛ばした俺はたまたま見つけたモーテルに転がり込んだ。<br />尾行は無かったし、偶然入った所なら襲われる事も無い。<br />部屋に入ると真っ先に信頼できる仲間である二人の男に連絡を入れた。<br />ブラボー９とイエローベアーだ。<br />今何が起こっているのか確かめる必要があった。<br />だが元々連絡のつかなくなっているベアーはともかく、どういうわけかブラボーまで連絡がつかない。<br />再び悪夢が現実になりつつある感覚に襲われる。<br />そんな考えを打ち消そうとバーボンをグラスに注ぎ、今に至るらしい。<br />「我ながら呑気なもんだ。」<br />グラスを拾い、水を注ぐと一気に飲み干す。<br />「フゥ、ようやく目が覚めたぜ。さて、これからどうしたもんかな？」<br />そうつぶやきながら、もう一度ブラボー９に連絡を試みる。<br />やはりつながらない。<br />「さて次は・・・。」<br />そう言った瞬間、携帯が手の中で震える。<br />画面には「ＹＢ」の二文字があった。<br />「おぉっ、ベアー生きてやがったか！」<br />驚きながら電話に出る。<br />「よぉ、大丈夫か？」<br />「ああ、何とかな。」<br />お互いの状況を確認しあうと、落ち合う場所を決め手短に電話を切る。<br />「そーいやブラボーの奴、女と暮らしてたよな。えっと何だっけ？」<br />仕度をしながらふと思い出した。<br />「そーだサリーだ、サリー。」<br />いつだったかブラボーを送った時チラッと見かけた事があった。<br />ショートヘアーが似合う美人だった。<br />後日、仲間のダニエルに聞いた話では、イエローベアーとブラボーは彼女をめぐっての恋敵だったらしい。<br />「ブラボーの家に行きゃあサリーが居るかもしれないな。」<br />時計を見るとそっちに行ってからでもベアーとの合流には間に合いそうだった。<br />「何か知ってるといいんだが。」<br />車に乗り込むとラジオのスイッチを入れ、走り出す。<br />『・・・続いて天気予報です。本日正午からは雨でしょう。所により雷を伴い強く降る恐れがあります。なお・・・』<br />天気はどうやら崩れるらしい。<br />軽く舌打ちするとアクセルを踏み込みスピードを上げる。<br />「嵐になるかもな。」<br />前方には真っ黒な雲が低く、禍々しく垂れこめていた。<br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>Ｋ（後編）</title>
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    <published>2005-05-07T03:52:51Z</published>
    <updated>2008-12-04T03:53:49Z</updated>

    <summary>雪の降る道を猫は走り続けていた。小さな体のどこにそんなエネルギーがあったのだろう...</summary>
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        <name>GAUCHE</name>
        
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        <category term="Ｋ" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 175px; HEIGHT: 179px" height="220" alt="1115394769.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1115394769.jpg" width="215" /></span>雪の降る道を猫は走り続けていた。<br />小さな体のどこにそんなエネルギーがあったのだろうか、ほとんど飲まず食わずの上休みもしなかった。<br />今はなき親友との約束を口にくわえ、ただひたすら走り続けた。<br />「うわっ、見ろよアレ！」<br />「気持ちワリ～！化け猫だ！」<br />「悪魔め、コレでも喰らえ！」<br />通りがかった街では子供達が石を投げつけた。<br />その内の一つが猫の頭に当たった。<br />一瞬足元をよろめかせながらも踏みとどまる。<br />血が滲んできて地面へと滴り落ちた。<br />「フーッ！」<br />「わーっ、悪魔に呪われるー！」<br />「お兄ちゃん、待ってー！」<br />子供達をにらみつけると一目散に逃げ出していった。<br />（フン、アクマカ。）<br />しばらく去っていった方をにらみつけていたが、やがてまた走り出す。<br />（ナントデモヨベバイイサ。オレニハナマエガチャントアル。）<br />走りながら絵描きのことを思い出す。<br />「ほら、ホーリーナイト、また一枚描けたぞ！」<br />「おふぁよー、ホーリーナイト。ふぁ～あ。」<br />「ホーリーナイトは聖なる夜って意味さ。」<br />「ホーリーナイトー、ご飯だぞー！」<br />「おいでホーリーナイト、くっついて寝よう。」<br />耳に残っているのは優しく温かい声ばかりだった。<br />（カナラズ、トドケテヤル。）<br /><br />数日後、猫はついに親友の故郷にたどり着いた。<br />目指す家まではもう数キロだった。<br />ここに来るまで決して楽な道のりではなかった。<br />見かける人間は彼を気味悪がった。<br />犬に襲われたりもした。<br />猛吹雪で道を見失いそうにもなった。<br />体は既にボロボロだった。<br />だが彼はここまで来た。<br />（モウスコシダ。）<br />少しふらつく足取りで道を渡る。<br />目的の場所に近づき気が緩んだのだろうか、周りに対する警戒心が少し薄れていた。<br />気づいた時には遅かった。<br />響き渡る甲高いブレーキ音。<br />間を置かず鈍い衝撃音が聞こえた。<br />「あーあ、やっちまった。」<br />車から若い男が出てきてぼやいている。<br />猫は道の真ん中でグッタリしていた。<br />「クソッ、バンパーに傷がついちまったじゃねえかバカ猫がぁっ！」<br />男は猫に近づくとツバを吐きかけた。<br />「ねーえ、早くしてよお。」<br />車の中から女が呼びかける。<br />「おう、今行く。」<br />男は車を出すと、まだ腹の虫がおさまらないのか猫の横を通り過ぎる時に缶コーヒーを投げつけて去っていった。<br />猫はその場で動けずにいた。<br />（モウ、ムリカナ。）<br />雪が容赦なく黒い猫の体を白く染めていく。<br />（ドウセ、トドケテモ、コワガラレルダケダ。）<br />猫はそこで旅を終えようとしていた。<br />その時、強い風が吹き手紙を飛ばそうとした。<br />無意識に手紙を強くくわえ、風にあらがう。<br />手紙が少し曲がり、視界には親友の書いた字が映る。<br />（フザケルナ！）<br />猫はよろよろと立ち上がった。<br />（キラワレモノノオレニモ、イミガアルノナラ...。）<br />足を一歩前に進める。<br />（コノヒノタメニ、ウマレテキタンダロウ。）<br />また一歩足を進める。<br />（アイツハヤサシサヲ、オシエテクレタ。）<br />もう一歩進むつもりが、地面に崩れてしまう。<br />足が一本ちぎれかけていた。<br />（ダッタラオレハ・・・。）<br />力を振り絞り立ち上がる。<br />（ドコマデモハシッテヤル！）<br />壊れた体を引きずるようにして猫は走った。<br />走り、転び、また走った。<br />（マケルカ、オレハホーリーナイトダ！）<br /><br />猫はついにその家を見つけた。<br />ドアにへばりつくとガリガリ引っ掻きながら鳴いた。<br />やがて中から絵描きの恋人が姿を現した。<br />「・・・・・！どうしたの猫ちゃん、傷だらけじゃない！」<br />猫は口にくわえた手紙を突き出した。<br />「コレを・・・？アタシに？」<br />躊躇する恋人になおも手紙を突き出す。<br />「分かったわ、読めばいいのね。」<br /><br />手紙を読んだ恋人の目からは大粒の涙がとめどなく溢れた。<br />「ありがとう。届けてくれてありがとう。」<br />そう言って頭を撫でてやるとホーリーナイトは一際高い声で誇らしげに鳴いた。<br />「ニャー！」<br />そしてそのまま満足そうに目を閉じた。<br />恋人は何度も何度も繰り返しながら、もう動かなくなった猫の頭を撫で続けた。<br />「ありがとう。ありがとう。ありがとう・・・。」<br /><br />数日後、恋人の家の庭の一角に小さな墓が建てられた。<br />そこには画家のイニシャルのＫを加えて、こう記されていた。<br />『聖なる騎士、HolyKnightここに眠る』<br /><br />（完）<br /><br /><br />原作<br />BUMP OF CHICKEN<br />「Ｋ」<br />アルバム「リビングデッド」収録]]>
        
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    <title>第九話「メタモルフォーゼ」</title>
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    <published>2005-05-17T14:26:25Z</published>
    <updated>2008-12-04T14:28:16Z</updated>

    <summary>緑色の物体が形作ったのは人間だった。それは全身が緑色であるという事を除けばまぎれ...</summary>
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        <name>GAUCHE</name>
        
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        <category term="宇宙の海は俺の海" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 198px; HEIGHT: 219px" height="422" alt="1116256697.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1116256697.jpg" width="362" /></span>緑色の物体が形作ったのは人間だった。<br />それは全身が緑色であるという事を除けばまぎれもなくベンジャミンだった。<br />しばらくそのまま止まっていたそれが急に右手を上げた。<br />「よお、お二人さん。」<br />ベンジャミンの顔をしたそれが口を開いた。<br />その声は水を通したような響きだった。<br />二人は返事もできずにただ見つめていた。<br />「あれ？驚かせちまったみたいだな。まあ当然か。こんなナリだからな。」<br />わざとらしく両手を広げ肩をすぼめる。<br />ベンジャミンもよくしていたアメリカ人特有の仕草だ。<br />「ホントにベン、お前なのか？」<br />イワノフが何とか声を出す。<br />「ああ、俺だとも。いや、正確には俺であって俺じゃないな。」<br />「一体何がどうなってる？お前何でそんな事に？あの物体が関係してるのか？」<br />「おいおい、落ち着けよドーソン。」<br />「いいから説明しろ！」<br />「ああ、元よりそのつもりだ。」<br />ベンジャミンが続ける。<br />「まず俺がこうなったのはお前らが思ってる通りあの物体が原因だ。実験中に感染...、いや『感染』って言い方は適当じゃないな。加わったとでも言えばいいか？」<br />「加わった？意味わかんねえよ。」<br />「まあ待てよ。ちゃんと説明するさ。」<br />緑色の顔で苦笑いすると先を続けた。<br />「加わったって言うのはな、この体は俺一人の物じゃないってことさ。」<br />二人とも今ひとつ分かりかねるといった表情だ。<br />「言ってみれば群生の状態だな。それも個体のじゃなく、DNA情報の群生だ。この体には何千、何万、何億という種類の生物の情報が入ってるのさ。」<br />「なぜそんな事が分かる？デスティニーの施設にはDNAを調べる能力までは無いはずだ。」<br />イワノフの疑問にドーソンもうなずく。<br />「調べたんじゃない。伝わってきたのさ。この中にいるとどうやら全ての情報が共有されるらしい。同化すると共に物凄い量の映像や音が俺の意識に流れ込んできた。初めは驚いたが、慣れてくると次第にその一つ一つを消化できるようになった。すると今度は面白い事に気がついた。んー、これは口で言うより見せた方が早いな。」<br />そう言った途端、ベンジャミンの体はドロドロと崩れ落ちた。<br />「わわわっ！」<br />二人が驚いて後ずさりすると、緑色の物体はまた何かを形作り始めた。<br />それは今まで見たことも無い形の生物に変貌した。<br />地球の生物で無理に例えるならイソギンチャクが近いだろうか？<br />ただし伸び縮みする触手を何百本も持つ人間サイズのイソギンチャクが居るとすればの話だが。<br />触手はそれぞれ別の方向に動いてそこらじゅうで食糧を漁り始めた。<br />どうやら一つ一つの先端に口（？）がついているらしい。<br />「ジーザス！」<br />ひとしきり食糧を漁ると、また全体がドロドロと崩れ別の形に変わっていった。<br />今度は一見すると蜘蛛の足のように見えるものが十数本伸びていた。<br />蜘蛛と決定的に違うのは足があるだけで、頭も体もどこにも無かった。<br />ただ中心部分から四方八方に足が伸びているだけの奇妙な形だった。<br />大きさはさっきよりも少し大きく、車ぐらいになっていた。<br />それは突然走り始めた。<br />「うわわわわっ！」<br />慌てふためく二人を囲むように円を描きながら驚くべき速度で駆け回った。<br />やがて床だけでなく壁、天井をも自在に移動し始めた。<br />「ベン！おいベン！もういい！分かったからやめろ！」<br />ドーソンが蒼い顔で呼びかける。<br />それでも足は走るのを止めなかった。<br />二人の背筋に冷たい汗が流れた。<br />しばらくして目の前まで戻ってくると足の一本が形を崩し、ベンの顔を作った。<br />「ハハハッ！どうだ、スゲエだろ！ハハハッ！」<br />明らかに興奮した調子で声をあげる顔だけのベン。<br />もはやこの世の物とは思えない光景だった。<br />「ウゥッ...。」<br />イワノフの喉に酸っぱい物がこみ上げてくる。<br />何とかそれを抑えながら質問を投げかける。<br />「つまり、その体は中にDNA情報のある生物なら、どれでも発現可能って事か？」<br />「そういうことだ。」<br />ベンが満面の笑みを浮かべながら返す。<br />「しかしそんな生物がなぜ存在する？どこの星で生息してるのかは分からんがおかしいじゃないか。そんなのがいたら、とてもじゃないが生態系が成り立つはずが無い。」<br />「さすがはイワノフだ。いいところに気がついたな。」<br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>第十話「迷走（２）」</title>
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    <published>2005-05-23T10:35:24Z</published>
    <updated>2008-12-05T10:36:47Z</updated>

    <summary>車を走らせながらベンはダニエルとの会話を思い出していた。関わっていた仕事も終わり...</summary>
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        <name>GAUCHE</name>
        
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 257px; HEIGHT: 181px" height="432" alt="1116858454.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1116858454.jpg" width="576" /></span>車を走らせながらベンはダニエルとの会話を思い出していた。<br />関わっていた仕事も終わり、ダニエルの部屋で一杯やっていた時のことだ。<br />何気なく視線を移したテーブルの上には数葉の写真が無造作に置かれていた。<br />その内の何枚かに同じ女が写っていた。<br />「なぁ、何でお前がこんなの持ってんだ？」<br />写真に写っているのはブラボーの女、サリーだった。<br />「あぁ、それか。ん～、なんでもない。」<br />「なんだよ、こんなに写しておいてなんでもないってこたないだろ。」<br />明らかに隠し撮りと思われる写真を見ながら訊いた。<br />「まあ別に隠すほどの事じゃないからいいか。それ、ブラボーの女だ。」<br />「それは知ってる。前にヤツの家のそばでちらっと見たからな。」<br />「じゃあ、コレは知ってるか？同じ頃にイエローベアとブラボー９の２人と知り合ってさ、余り詳しい話までは知らねぇけど、２人でその女取り合ったらしいぜ。」<br />「んで、何でお前がそんなの写してんだ？」<br />「上に言われたのさ、調べろってな。いつどこから組織の情報が漏れるか分かったもんじゃないだろ？言ってみれば『監査』みたいなもんか。嫌な仕事だが組織を守るためには誰かがやらなきゃな。」<br />「で、どうなんだ？」<br />「こうやってお前に喋ってる時点でシロ確定だろ。」<br />「だな。」<br />その時はそのまま酒を飲んで流していたが、今にして思えば妙な話だ。<br />そんな事をし始めたらキリが無いだろうに。<br />頭の中で引っ掛かりがむくむくと成長し始める。<br />ダニエルに連絡をしようと携帯を取り出した。<br />ヤツの番号を呼び出し、耳に当てると接続中の耳障りな音が聞こえてくる。<br />つながるのを待つ間、少し焦れてハンドルを指でトントンと叩く。<br />「お前からかけて来るなんて珍しいな。」<br />「なんて言い草だ！！んで今何してる？」<br />「ん？今か？まぁちょいと取り込み中だが。」<br />「ねえ今コーヒー切らしてるのー。紅茶でもいいかしら？」<br />不意に電話の向こうから女の呼ぶ声が聞こえてきた。<br />「じゃあそういう訳なんでまたな。」<br />「おいちょっと待て・・・」<br />既に電話は切られていて、断続的な音だけが聞こえていた。<br />急いでリダイアルしてみるが、数秒の後に聞こえてきたのは、「電波が届かないか電源が入っておりません」という機械的なアナウンスだった。<br />「やっぱりか。」<br />引っ掛かりは確信へと変わった。<br />「俺の考えが正しければあの声の主は・・・。」<br />ふと気がつくとフロントガラスにはいつの間にか水滴がつき始めていた。<br />ワイパーを動かし、更にスピードを上げる。<br />それと同時に雨は一気に強さを増し、叩きつけるような勢いで降りそそいだ。<br />「状況も最悪なら天気も最悪だな。」<br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>第十話「生存本能」</title>
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    <published>2005-05-30T14:29:03Z</published>
    <updated>2008-12-04T14:30:21Z</updated>

    <summary>「確かにこんな生物が存在するはずが無い。ハッキリ言って無敵だからな。惑星中がコイ...</summary>
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        <name>GAUCHE</name>
        
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        <category term="宇宙の海は俺の海" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px; WIDTH: 315px; HEIGHT: 236px" height="480" alt="1117462908.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/1117462908.jpg" width="640" /></span>「確かにこんな生物が存在するはずが無い。ハッキリ言って無敵だからな。惑星中がコイツになって仕舞いにゃ共食いでも始めてジ・エンドだろうな。でもコイツが生まれたのにはちゃんと理由があるのさ。」<br />足だけの体でゆっくりと歩きながらベンジャミンの説明は続いた。<br />「元々コイツはその星の食物連鎖の中でも最下層に生きる存在だった。見かけどおり、スライムの親玉みたいなでかさだが動きはのろいし、爪も牙も持っちゃいない。すぐにでも絶滅しそうなもんだ。だがコイツには弱肉強食の自然界を生き延びる手段が一つだけあった。擬態だ。それも地球上の生物がするそれとは一線を画すレベルのな。ある器官で生物の体組織を摂りこむと正確にDNA情報をコピーして、一定時間内ならその生物に擬態する事が可能だった。全くもって驚く以外に無い話だろ？こんなスライムが最先端のスーパーコンピューターで何ヶ月もかかる作業をあっさりやって、しかも体細胞の再配列までしてのけるってんだから！」<br />「にわかには信じがたいが、目の前のお前を見ると首を縦に振るしかないな。だがそれだけじゃ今の状況は説明できないぞ。」<br />イワノフが疑問を投げかけるとベンジャミンが天井でピタリと止まりニタ～と笑った。<br />「分かってるさ。更に驚きなのはこれからだ。」<br />上に張り付いたまま体がまた変化を始める。<br />今度はどうやら植物らしい。<br />天井一面に根を張り巡らせ、大輪の花を咲かせている。<br />花の一つ一つの色はどれも全く違っていた。<br />あるものは赤、あるものは青、そしてまたあるものは透明だった。<br />その中の一つはつぼみだったが、ゆっくり開くと中からベンジャミンの顔が現れた。<br />「ところで地球自体が一つの生命体だという学説を知ってるか？」<br />「ガイア理論だな。それで？」<br />イワノフが先を促す。<br />「そうそれだ。この体の中の生物が棲んでいた惑星は実は寿命が近づいていたのさ。それを惑星の生命全てが肌で感じ取っていた。しかし誰もが「生きたい」と強く願った。そこで奇跡が起きた。惑星の意識とでも言うべき物が働き、ある生物が突然変異を遂げた。その生物には惑星上の全ての生命を食う権利が与えられた。他の生物はそれには一切抵抗しなかった。代わりにその選ばれし者の体には食った生物の遺伝子情報が全て蓄えられた。そして最終的にその生物同士で最後の一匹になるまで食い合ったのが...。」<br />「その体ってわけか。」<br />ドーソンが渇いた声を出す。<br />「そうだ。言ってみれば生ける遺伝子銀行ってとこだな。そして最後の一匹になるのを待ってたかのように惑星はすぐさま超爆発を起こした。そう、遺伝子情報を保存したまま宇宙をさまよい、いつかどこかの星に流れ着いた時に再び元の状態に戻ろうとしたのだ。気の長い話だろ？漂着した先が生存に適してるかどうかも分からないし、大気圏を突破できるかどうかも分からないのに。しかし我々が生き延びるにはこれしか無かった。だが大きな誤算があった。爆発の衝撃は想像を絶するものだった。惑星上のあらゆる遺伝子を網羅した我々でさえ体は粉々に砕かれ、正直もうダメだと思ったよ。もはや奇跡でも起きない限り生き延びる確率は０に等しかった。」<br />ベンジャミンの語りが熱を帯びると共に葉が振動し、不気味な音を立てていた。<br />「そして奇跡は起きた！我々が漂う先には知的生物が住んでいて宇宙にまで進出していた。一度目は失敗したが二度目はその知的生物との融合も成功した！これを奇跡と言わず何と言う！ハハハハハッ！」<br />「まずいな。」<br />イワノフがそっとドーソンに耳打ちする。<br />「何がだ？」<br />「いつの間にか主語が『我々』になってる。」<br />「・・・・・！」<br />「おいベンジャミン！」<br />イワノフが意識的に名を呼び語りかける。<br />「何だイワノフ？」<br />どうやらまだベンジャミンの意識は存在するらしい。<br />「つまり、その生物の最終目的は地球上で元の惑星の生態系を展開するって事か。」<br />「無論だ。だが心配するな。元の生態系を展開しても地球の生物全部が死滅するって訳じゃない。運が良ければ何％かは生き残れるだろ。ククッ！」<br />「何％だと？おいふざけんじゃねえぞ！」<br />ドーソンが怒鳴りつける。<br />「ふざけてなどいないさ。俺の知識とこいつらの情報を照らし合わせた上での冷静な分析だ。ちなみに人類も絶滅する方に入ってるぞ。」<br />二人に戦慄が走る。<br />「別に問題ないだろ？地球にとって人類なんか癌細胞みたいなもんだ。居ない方が地球が綺麗になるぞ。」<br />「しかしそれならなぜ地球人のお前に主導権を与えている？お前が反抗するとか思わなかったのか？お前もどうなんだ？」<br />「ククク、そんなことか。地球にうまく入り込むならやはり地球をよく知る者に指揮させた方がいいだろ？それに俺は地球人であるが科学の使徒でもある。故郷を思う気持ちより知的好奇心の方が勝っちまったのさ。こいつらが地球に出現したらどうなるか、想像しただけでもゾクゾクするぜ。」<br />「だがここには俺たちがいる！狙い通りに行くと思うなよ！」<br />ベンジャミンの目が冷ややかにドーソンを見つめる。<br />「知らないって事は幸せだな。」<br />哀れみを持った口調で言い放つベンジャミン。<br />「何だと？」<br /><br />（続く）]]>
        
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    <title>第十一話「落下」</title>
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    <published>2009-01-06T22:06:21Z</published>
    <updated>2009-01-06T22:27:52Z</updated>

    <summary>不意にスピーカーから警告音と共に無機質なコンピューターの声が流れた。「警告します...</summary>
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        <name>GAUCHE</name>
        
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    <content type="html" xml:lang="ja" xml:base="http://kgb7.com/999/">
        <![CDATA[<p>不意にスピーカーから警告音と共に無機質なコンピューターの声が流れた。<br />「警告します。ＩＳＳの高度が下がっています。警告します。ＩＳＳの高度が下がっています。・・・」<br />イワノフとドーソンは激しく狼狽して顔を見合わせた。<br />「そういうことさ、お二人さん。すでに手遅れってわけ。」<br />ベンジャミンの顔だった花はそう言い終えるとつぼみに戻り、再び開くがそこにベンジャミンの顔は無い。いつの間にか別の花がベンジャミンの顔に変わっていた。<br />「おまえっ、ＩＳＳを地球に落とすつもりかっ？」<br />ドーソンが檄昂する。<br />「ベンジャミンの体のまま滞在期間が終わるのを待っても良かったんだがな。我々は長い間星々の間を彷徨い続け、もう待ちくたびれた。だから少しだけ荒っぽい方法をとる事にした。」<br />「だがそんなことをして無事で済むはずが無い。」<br />「おや、我々の心配をしてくれるのか？思慮深い男だなイワノフは。しかしそれには及ばんよ。」<br />突然花が落ち、葉が散り始め床一面を埋め尽くした。<br />続いて枝と根がパキパキと乾いた音をたて細かく折れてその上に散らばった。<br />その一つ一つが小刻みに震えながら緑色のスライム状に変わり、また何かを形作り始める。<br />ベンジャミンだ。<br />正確にはベンジャミンの顔のみ。<br />何十、いや何百ものベンジャミンの顔が床から二人を凝視している。<br />その全てがいっせいに同じことを喋り始めた。<br />「惑星の崩壊と宇宙空間を生き抜いた我々だ。大気圏突入時の空力加熱さえしのぐ事ができれば後はどうとでもなる。自分たちのことを心配した方がいいんじゃないのか？もっとも、どうあがいても死を免れる事はできないだろうが。」<br />喋り終わると一つの顔がクスクスと笑い始め、やがてさざ波のように全体へと拡がっていった。<br />「ふざけんじゃねえ！」<br />ドーソンが怒鳴りながら顔の一つを蹴っ飛ばした。<br />グチャッと濡れた音をたてて壁にぶつかり、緑色のドロドロした状態で貼りついた。<br />「ぉイひどいヌァ。同胞ヌィなんつぇことするんブァ。」<br />床に向かって少しずつ垂れながらも再びベンの顔を作るが、歪んでいるので発音がひどくおかしい。<br />「ぉイひどいヌァ。同胞ヌィなんつぇことするんブァ。」<br />他の顔がニヤニヤしながら口々にまねをした。<br />「ジーザス！頭がおかしくなりそうだぜ。同胞だと？この化け物め！いいか、教えてやる。地球は俺たちの星だ。てめえらの好きにできると思うなよ！」<br />吐き捨てるように言うとドーソンはズヴェズダへと向かった。<br />「やれやれ、コントロールが効かないのはわかっているだろうに。おいイワノフ、あんたはどうするんだ？」<br />全ての顔がピタリとまねをやめイワノフに尋ねた。<br />「一つ質問があるんだが。」<br />「ホント冷静な男だよ。なんだ？」<br />「なぜ緊急帰還機を、ソユーズを使わない？わざわざＩＳＳ全体を落とすなどしなくてもソユーズに乗って地球を目指せば良かったのでは？」<br />「それならさっきおまえさんが言ってたじゃないか。落下場所を特定されて、またミサイルを打ち込まれてはさすがの我々でも耐えれるとは限らないからな。その点ＩＳＳ全体で落ちれば、適当なところでクエストから脱出すればいいってわけだ。」<br />イワノフはいぶかしげな顔になり、しばらく考えてからまた口を開いた。<br />「なるほど、お前たちは分身同士でテレパシーのような能力もあるみたいだな。だが今言った理由は嘘だな。」<br />何百というベンジャミンの顔から笑みが消えた。<br />「なぜそう思う？」<br />「一番目に飛んだ猿の時は、ポッドに緑色の物体がこびりついていただけだった。今のように活発に動ける状態じゃなかったから、まだ生物として充分な肉体を展開しうる状態ではなかったから、ミサイル攻撃から逃げる事ができなかったんだろ？ベンジャミンの体を吸収した今ならそれも可能なはずだ。」<br />そこまで言ってイワノフは異変に気づいた。いつの間にかベンジャミンの顔にぐるりと囲まれていた。<br />「おまえは危険な男だ。」</p>
<p>
<p>
<p><img class="mt-image-none" height="232" alt="350px-Soyuz_TMA-7_spacecraft2edit1.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/350px-Soyuz_TMA-7_spacecraft2edit1.jpg" width="350" /></p>
<p>（続く）</p></p></p>]]>
        
    </content>
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    <title>第十一話「逆流」</title>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="http://kgb7.com/999/2009/01/post-23.html" />
    <id>tag:kgb7.com,2009:/999//4.1428</id>

    <published>2009-01-16T15:51:40Z</published>
    <updated>2009-01-16T16:09:45Z</updated>

    <summary> 「ユキーーーーーーーーッ！！」爆発する車の映像が浮かんだと同時に叫んでいた。全...</summary>
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        <name>GAUCHE</name>
        
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        <category term="雨とマーガレット" scheme="http://www.sixapart.com/ns/types#category" />
    
    
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        <![CDATA[<p>
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="DISPLAY: inline"><img class="mt-image-right" style="FLOAT: right; MARGIN: 0px 0px 20px 20px" height="240" alt="rain.jpg" src="http://kgb7.com/999/images/rain.jpg" width="320" /></span>「ユキーーーーーーーーッ！！」<br />爆発する車の映像が浮かんだと同時に叫んでいた。<br />全身を激しい悪寒が襲う。<br />崩れ落ち両手両膝を床についた。<br />「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。」<br />息苦しい。<br />思うように呼吸できない。<br />目がチカチカし、視界が黒く塗りつぶされていく。<br />激しい鼓動がさらに記憶の扉を叩く。<br />「オエェェェェェッ！」<br />床に吐瀉物を撒き散らしながらもフラッシュバックは続いた。<br />ベビーグッズ。<br />雨。<br />日本の『オマモリ』。<br />マーガレットの花。<br />笑顔で傘をさしだす女。<br />クリスマスツリー。<br />窓の外は雷が鳴っていた。<br />稲光に呼応するかのように断片的な映像が現れては消え、また現れては消えた。<br />数分後、胃の中身を全て吐き出したころ全てを思い出した。<br />床に座り、倒れるように壁にもたれる。<br />「ユキ、あの日も雨が降っていたな。」</p>
<p>まだ組織に入る前のことだ。<br />戦場を渡り歩く傭兵暮らしをしていた俺はいつどこで死んでもいいと思っていた。<br />他人の命も自分の命も等しく紙切れのようにうすっぺらい物だった。<br />戦場にいないときは酒を飲んでは喧嘩という日々を送っていた。</p>
<p>「オラどした？もう終わりか？」<br />周りには男が三人転がっている。<br />モヒカンの男。<br />両腕にびっしりとタトゥーの入った男。<br />スキンヘッドの男。<br />「てめえ、このままで済むと思うなよ。」<br />口から流れる血をぬぐいながらモヒカンの男が言った。<br />「おお、負け犬のセリフその一、だな。」<br />ニヤニヤしながら言うと三人は野次馬をかき分けて消えていった。<br />カウンターに向かい、またテキーラをあおる。<br />周りも何事もなかったかのようにそれぞれのことに戻っていく。<br />「くだらねえ。おれもこいつらもくだらねえ。」<br />雨がやむのを待ってさらに五杯テキーラをのどに流し込んだが、空模様は依然として鈍い灰色のままだった。<br />あきらめてバーを後にし、降りしきる雨の中、安ホテルに向けてぶらぶらと歩く。<br />「おにいさんいっしょに暖まってかない？安くしとくわよ？」<br />商売女たちが次々と寄ってきては誘った。<br />いちいち答えるのも面倒なので腕を軽く振りはらい離す。<br />「なんだい、この貧乏人のインポ野郎！」<br />そんなやり取りを何度かしながら歩く。<br />いくつ目かの角を曲がると人通りの少ない裏通りに出た。<br />その時不意に背中に熱を感じた。<br />「へへへ、バカ野郎がっ！」<br />さっきのモヒカンの男だ。<br />熱いと思ったのはナイフで刺された痛みだった。<br />モヒカンは薄ら笑いを浮かべながらナイフを引き抜こうとする。<br />「おっおっ？なんじゃこりゃ？」<br />ナイフは硬い筋肉に挟まれてビクともしない。<br />顔から血の気が引いていく。<br />「ば、化け物めっ！」<br />モヒカンの男は一目散に走り去った。<br />「負け犬のセリフその二、だな。おい、忘れモンだぞ。」<br />ひとりつぶやきながら、背中に手を回し一気にナイフを抜いた。<br />道端に放り投げると、何事もなかったかのようにまた歩き出す。<br />雨は相変わらずだ。<br />安ホテルまでもう二、三分のとこで足がふらつく。<br />「おっ、なんだ？」<br />そう思った次の瞬間には道にぶっ倒れてた。<br />背中を触ってみる。<br />生暖かいヌルリとしたものが手にベットリと付いた。<br />「ああ、あの野郎意外と上手く刺してくれたな。」<br />おびただしい量の血が流れていた。<br />「ここが終わりの場所か。やっぱりくだらねえ人生だったな。」<br />最期に会いたい友も無ければ女もいない。<br />特に執着するようなものもない。<br />雨が血を洗い流してくれるのは我ながら上出来だ。<br />くだらねえ自分の跡を残したくも無い。<br />目を閉じ雨に打たれながら静かにその時を待つ。<br />遠くで足音が聞こえた。<br />乞食の類が財布でも掠め取りに来たかと思い放っておいたが、そんな気配もない。<br />顔に雨がかからなくなっていた。<br />ゆっくりとまぶたを開くと女がしゃがみこんで、笑顔で俺に傘を差し出していた。<br />「風邪ひくよ。」<br />それが、ユキだった。</p>
<p>（続く）</p>]]>
        
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