2.駄文戯言

生と死と秋の夜のこと

死ねない人間がいる。
正確にいうと死なせて貰えなかったとというべきか
一国を立てた英雄、世界を火の海にした男、世界を欺いたペテン師・・・
神は彼らに決して安住の死は与えない、
いつまでもいつまでも生きていかねばならない。

戦国の魔王 織田信長
生涯、誰も信じなかった男。その生涯で唯一信じた男に討たれ
本能寺で最後を遂げる  ・・・しかし遺体は発見されず。

そして魔王を討った男 明智光秀
信長に信任され、織田家中で一番の俸禄を得るも、謎の信長暗殺。
秀吉に敗戦し敗走中に農民により討たれる  ・・・しかし
討った農民は不明。討たれた正確な場所も不明  ・・・もちろん遺体は発見されず。

怪僧 ラスプーチン
ロシア皇帝を騙くらかすも革命派により暗殺。
砒素入りの菓子とワインを平らげ、ナイフで刺され、銃で蜂の巣にされ、まだまだ元気。
最終的には銀の蜀台で頭を叩き潰され、凍りついた川に沈められた。
二日後、死体が引き上げられ検死されたが、死体の肺には水が入っていた・・・・
そう、彼は生きていた。  ・・・検死調書の死因欄にはこう記された「水死」

長い秋の夜長それは、
死ねなかった者たちを考え過ごす為の夜。